なっぴも高校生、いざというときのために『護身術』を習っていた。タイスケは道場での稽古の後、よくそれをからかった。
「おまえなんか襲うよ延缓衰老うな命知らずがいるもんか、殺されちゃうな、きっと…」
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なっぴは、一点を見ていた。次元の谷に流れ込んだ風がわずかに動いた。なっぴは声を上げた。
「そこね、次元ミズスマシ!」
彼女のキューはしかし空を切る。
「バカめ、何処を狙っている」
背後からなっぴは簡単に『次元ミズスマシ』に『羽交い締め』にされた。いや、なっぴはそれを待っていた。

体重を預けて彼女は両膝を胸に付けた。
「えいっ!」
「ぐっ」
「たあっ!」
「ぐへっ」
体重を乗せて次元ミズスマシの足の甲にまずかかとが踏み降ろされた。たまらずかがみ込むところを一本背負いでなっぴは投げ飛ばした。背中を打ちつけられた次元ミズスマシはそれでもヨロヨロと立ち上がった。
「ど、何処だ…」
彼が見失ったなっぴのかけ声が、すぐ後ろから響く。

「打ち抜けレインボーショット!」
背中のマルマを打ち抜かれた次元ミズスマシはその場に倒れた。

キューの先に肌膚老化は紡錘型の身体に赤紫色の触手を無数に持つ『ラグナ』がしばらくはもがいていたが、やがて動きを止めると見る間にひからびていった。

侍アブの刀をギリーバは警戒していた。
「一瞬の太刀筋を止めた瞬間が、勝機…」

ギリーバはヨミの戦士の中でもクモ族と同じで武器は使わない。かつてナノリアの王『キング』の巨大な角さえ噛み切った強力な牙がある。身体は堅い鎧に覆われてる、さらにガラスのような面でも垂直に上れる吸盤つきの脚まで持つのだ。王国の戦士として最強であることは疑いも無かった。

次第に間合いがつまっていく。次元ミズスマシが倒されたのを見ても、『侍アブ』は動揺しなかった。落ち着いてこの相手を一刀で仕留めようと気迫を込めていた。動きがあったのは今度は『侍アブ』の方だ。抜刀はおとりだった、袈裟がけで切るのが侍アブの作戦だった。抜刀を紙一重でギリーバが避けた。真上から二の太刀が襲った。
「ムン」
ギリーバはその刀を両手で受け止めた。そして強力無比の牙でそれを折った。そして左右の触覚が侍アブの後頭部にある『ラグナ』を一瞬でえぐりとった。
「さすがにピッカーが一目置くヤツだ…」
触覚の先の『ラグナ』もまもなく消滅した。

不思議な事に、ムシビトが息を吹返した。
「おまえは、あの『なっぴ』と言った娘か?」
次元ミズスマシは岩に腰をかけ。
「まだ戦うつもりか、ならば…」
ギリーバが牙を開いた。しかしその素振りは既にない。風は次第にやみ始めていた。
「いや、俺は既にこの世のものではない。あの『ラグナ』が俺の寄り代、いや俺に寄生していたという方が正日常肌膚護理しいな、なあ侍アブよ」
侍アブはうなずいた。
「あの『ラグナ』はまだ幼体だ、あのサソリが俺たちに埋め込んだのさ」
侍アブがそう言った。
「ヨミの戦士が再び甦ったという訳か、恐るべき『ラグナ』の力を得て…」

ギリーバがなっぴに話そうとしたのは、『レムリア』がこの星に着く前の事だ。